2022年10月10日より、「愛でいっぱいまるまるタッチ」という音声番組を立ち上げました。
ベビーマッサージやタッチケアを通して、子育てや、人との関わりの中での疑問や悩みを一緒に考えていく番組です。
本ブログでは、音声配信でお聞きになれない方に、内容の要約という形で情報をお届けします。
前回に続き、絵本作家兼デザイナーさん塚本ユージさんと熱く語ってまいります!
今回は、塚本さんが、親子に向けたイベントをする中で「メッセージを伝えたい親子」=ユージさんの使命が明確になっていく過程、そこから生み出される絵本に関しての逸話がとても魅力的です!
それでは始めて参ります!!
インタビュアー:本日は62回目(2023/12/11)の配信です。小森こどもクリニックのタッチケア講師である千明さんと、ゲストは今回も絵本作家兼デザイナーの塚本ユージさんにお付き合いいただきます。塚本さんお願いいたします。
塚本ユージさん:よろしくお願いします。
インタビュアー:前回2回でかなり深いところまでお話を伺ってきましたが、さらに深掘りたいことがあるということですが。
千明:はい、そうなんです。親子向けのイベントの中で、積極的にアプローチしたい親子と、そうではない方々はありますか?
塚本ユージさん:最初は親子向けのイベントをやっていて良かったと感じることはありましたが、来てくれる親子を見て、「あれ、自分が心からアプローチしたい親子はこの形の親子なのかな」みたいに疑問に思うようになってきました。イベントに来てくれる親子は、基本的にハッピーな親子が多いんですよね。
でも、自分が発信しているライブ絵本は、元々「いじめをなくしたい」とか、「家族の大切さ」をテーマにしていたので、家族の中に少し絆や愛情が欠けてしまっている親子にこそ見てもらいたいなっていう思いが、イベントを通して思うようになってきました。この時点では、まだ自分の中でもはっきりはしていなくて、今年(2023年)に入ってから、強く感じるようになってきました。
今までは、どこか借りた場所に親子を呼んでやってましたが、待っているのはなく、自分から行けばいいのだ!と思うよういなりました。
このような思いを届けたいと思う親子の元に、自分から行けばいいのかなっていうのに気づき、児童養護施設や母子生活支援施設に、今年出した絵本を持って行き、絵本の読み聞かせをするようになりました。
「コロネのおしりはどっち?」という本は、自分探しがテーマなので、自分自身をデザインしていくようなゲームをしたり、絵を書いたりする遊びをするようになって、僕の中で一つの答えというか、この子たちと会いたかったんだという気づきがありました。
千明:その新たな活動の中で、施設の方々から、子供たちの変化や成長があったよという報告は実際にありましたか?
塚本ユージさん:ありました。まず最初に施設の方から「そういう人が何かやりに来てくれるっていうのをずっと楽しみにしてた」っていうのを言われました。
コロネの絵本は、なりたい自分になっていくという話ですが、イベントの最後に子供たちも、それぞれみんながなりたい自分を絵で表現してみようと絵を描きました。
その絵を描いている姿や描いた絵を見た時に、これもまた思いつきだったんですが、この子たちの絵を展示して、たくさんの親子に見てもらいたい、自分が描いた絵を評価してもらうというか、たくさんの人にすごいねと言ってもらえる機会を持って欲しいなって思ったので、施設の担当の人と行政の方に行きました。
そしたら2023年9月に、みんなが描いた絵を展示施設で展覧会という形で、1週間展示することができました。
その後施設の方からは、子供が自分たちの絵を写真撮って誇らしげだったっていうのを聞きましたし、すごく喜んでくれてるみたいでした。
本当に僕のちょっとした関わりでしたが、小さな関わりが大きくなる過程で、何かのきっかけだったり、時には支えになっていればいいなっていうのは思いました。
千明:それは絶対子供たちの思い出に残りますよね。家族の中だけで終わってしまうのではなく、不特定多数のオープンされた場で自分の描いた絵が展示されるだけで、子供たちにとっては誇りに思うと思います。
今のお話から、子供が大人になる段階でいろんな経験やたくさん背負っていかないといけないものがある中の種蒔きというか、肥料やりをしているんだなと感じました。
また、児童養護施設の人たちには、平凡に暮らしてる私たち以上に、制約、制限がすごくあると思うので、少しでもできることをやっていこうと考えるユージさんはすごいなと思います。
塚本ユージさん:施設の子供たちは、自分のためだけに何かをもらうという経験が少ないようで、絵本の表紙を見せて「これ何のパンだ?」って言っても反応がなく、「あれ、僕の絵が下手くそなのかな?」と思ったんですが、そもそもコロネというパンがあることを知らなく、食べたことがないようだったので、後日本物のコロネを買って、1人1人にコロネとチョコペンを渡して、その絵本のキャラみたいに、チョコペンで目を描いたりして、めちゃくちゃ喜んでました。
千明:絵本の世界と現実を結び合わせることもされてるんですね。母子支援施設でも子供の喜びを見出せたことはありましたか?
塚本ユージさん:母子支援施設でのイベントでは、お母さんはお仕事をされているので、その時間に来れず、子供たちだけのイベントにはなりました。
その中で一番印象的だったことがあり、年齢が大きい子が絵本を読むことがなくなるので、最初はあまり乗り気じゃなかったんですが、みんなで椅子取りゲームしたり、最後には絵を描いてもらって、その子たちの絵を展示したりして、何とか気持ちを乗っけていき、最後に僕からコロネの缶バッチやシールをあげました。
そしたら、1人の子が「ママにもあげたいからもう1個ちょうだいよ」って言ってきて、すごく嬉しくなって「いいよ持っていきな」って言ったら、他の子たちも「ちょうだいちょうだい」って並びはじめました。
そこにちょっと斜に構えていた子も最後来て、恥ずかしそうに手だけ出して、ママや妹にもあげたいみたいな子もいました。最初はクールに構えてた子も、最終的にはやっぱりピュアだなって思うようなことがあり、お母さんのために持っていくと言われて、すごく嬉しかった印象があります。
千明:小学校高学年って考えると、大人びたい自分もありながらも、それ以上にやっぱりお母さん大好きっていうのをそのイベントを通して引き出せたこともあるし、きっと本人の中でも再確認できる場になったでしょうね。
塚本ユージさん:そうだと思います。
インタビュアー:塚本さんが、ライブ絵本やイベント活動を通して、子育ての中における絵本の役割や立ち位置はどんなふうに感じていますか?
塚本ユージさん:絵本はやっぱり親子の時間を作る道具だなと思います。未だに僕も奥さんも子供に絵本を読み聞かせする時に思いますが、寝ながら読むというあの空間がすごいですよね。客観的に見て、あの空間には誰も入れないようなオーラというか、エネルギーが出来上がるので、親子の時間が作られてる、親子で絵本の中に体験しに行っているような感じがします。
それはまた、ゲームをやることや映画を見ること、親子で遊んでいる時とは違う、独特な時間を共有できているんじゃないかなと、自分で読み聞かせしている時も、見ていても思いますね。
千明:タッチケアには触れるだけじゃなくて、触れる前の心構えが必要だったりするんですが、絵本には最初の壁がないところがよいですね。
絵本は子供からも読んでって言われたり、お父さんお母さんの声を聞いて安心したりしますし、物語によって親子で認識が一緒だったら絆が深まるし、認識が違っても、こういう感じで捉えてたんだという新たな発見でもあったりして、お互いの理解が深まりますもんね。
クリニックも待ち時間あるので絵本を置いていて、待ってる間にお母さんが絵本を読んであげてる姿を見て、クリニックでもコミュニケーションツールとして使ってもらえてるなと感じているので、その待ち時間が親子の絆を深める時間であってほしいなと思ってます。
ユージさんの絵本は素敵で、みんなの幸せを願いながら活動されてるユージさんの行動力がさらに拡大していって欲しいなと思いました。
インタビュアー:今回もたくさんのお話いただきました。
今日お話の中に出てきた絵本「コロネのおしりはどっち?」という絵本は、全国学校図書館協議会の選定図書に選ばれているということで、子供が読んでたという方もいらっしゃるかと思います。ぜひこちらも一度目を通していただきたいなと思っております。
そして塚本さん、次回もお付き合いいただいてよろしいですか?
塚本ユージさん:もちろんです。
インタビュアー:ありがとうございます。ということで次回もお楽しみください。千明さん、そして塚本さんどうもありがとうございました。